自動販売機大国ニッポン

東京の街を歩く。次々と目に入ってくるカラフルなデザインの自動販売機。日本を訪れた外国 人は自動販売機が街中にある風景に驚くらしい。アメリカでは自動販売機はたいてい建物の中に あって、外に置かれていることはほとんどないが、日本ではどこにでも自動販売機がある。街の中だけでなく、田舎の誰も通らないような道や、山の中にさえ、自動販売機が置いてあるほどだ。

自動販売機はどこの国でも発達しているわけではなく、100万台以上ある国は世界でもアメリ カと日本、そしてドイツだけだ。2005年のデータでは、アメリカが世界一 (783万台)で、日本 が世界二位(558万台)だったが、人口と国の広さを考えた場合、普及率は日本が世界一と言える だろう。自動販売機による売り上げも日本が世界一で、日本一忙しい自動販売機は、1台で1か 月に2万5000本の飲み物を売り、その売り上げは300万円にもなるという。

「お茶を買ったら温かかった」 「自動販売機が話してびっくりした」というのは外国人からよく 聞く話だ。日本の自動販売機は、夏には冷たい飲み物、冬には温かい飲み物というように、気温 の変化に合わせて、飲み物を冷たくしたり、温かくしたりして出してくれる。また、話す自動販 売機もある。例えば、ある飲み物のメーカーが関西地区に置いている「おしゃべり自動販売機」 は、関西弁で話をするそうだ。お客が自動販売機の前に立つと、「いらっしゃいませ」ではなく「まいど!」と言い、おつりがない時は「すんません。今、つり銭切らしてますねん」と、まるで関西人のように話すらしい。

この他にも、ひいたばかりの豆でコーヒーを入れるとか、冷凍食品を電子レンジで温めてから 出す、カップラーメンにお湯を入れて出すといった自動販売機もあって、日本の自動販売機は驚 くほど賢い。自動販売機で売っている商品も色々で、飲み物や食品は言うまでもなく、タバコからマンガ、週刊誌、CD、花、ネイルアート、ストッキング、おもちゃ、そして名刺までもある。

では、日本では、なぜこのように広く自動販売機が普及したのだろうか。一番の理由は、犯罪 が少なくて安全だということだろう。泥棒にとって無人の販売機は「ここにはお金が入っている から、盗んで下さいよ」と言っているように見える。したがって、犯罪が多く危険な所では、販 売機は壊され、中の現金はすぐに盗まれてしまう日本は以前ほど安全ではなくなったと言われているが、海外の多くの国と比べれば、まだそれほど危険というわけではない。だから、自動販 売機が外に置いてあっても、壊されるようなことはほとんどないのだ。

「自動販売機の文化史」という本の著者である鷲巣力氏は、日本が自動販売機大国となった理 由として、「技術に対する信頼感」と「自動化を好む社会」の二つを挙げている。確かに日本の 高い技術力は世界的にも認められていて、日本製のものは車でも冷蔵庫でも性能がよく、なかな か壊れない。したがって、機械に対する信頼も高いまた、日本人は自動化されたものが好きだ というのも事実だろう。タクシーに乗れば、ドアが自動で開いたり閉まったりするし、電車の切 符を自動改札機に入れれば、すぐに改札を通ることが出来るし、手をたたけば電気がつく電気ス タンドまでもある。

ビジネスという点から考えると、コストがあまりかからないことも自動販売機が普及した理由の一つだ。自動販売機は、無人で24時間ものを売ることが出来る上に、街の中に置いてあるか ら商品の宣伝にも役に立つというわけだ。面白いことに、パリの街の主な通りには自動販売機が 1台もないそうだ。日本が自動販売機大国になったのには、日本社会の特徴や日本人の考え方が 大きく影響しているのかもしれない。

自動販売機はいつでも利用できて便利だという一方で、エネルギーの無駄遣いとか未成年者でも酒やタバコが買えるなどといった批判がある。だが、このような批判に対しては、すでに様々な対策がとられている。例えば、省エネ対策の代表的なものには、エコベンダーと呼ばれる缶入 りの飲み物のための自動販売機がある。エコベンダーは、夏の間(7月~9月)は午前中に商品を 冷やしておき、電力消費がピークになる午後には冷やすのをやめるという省エネ型自動販売機で、 現在、ほとんど日本全国で使われている。このシステムの導入によって、1年の電力消費量が ● 10%~15%減ったそうだ。未成年に酒やタバコを売らない対策としては、深夜の販売を規制する とか、IDカードや特別なICカードがないと買えないようにするといったことが行われている。

日本中のどんな所にもあって、日本の特徴の一つと言え る自動販売機。ある調査によると、日本人の8割以上が生 活に必要なものだと答えている。最近では飲み物を買うと 50 募金が出来る「チャリティー自販機」も増えているそうだ。 便利なだけでなく、楽しくて、社会の役にも立つ自動販売 機!これからも日本の自動販売機はどんどん進化を続けて いくだろう。将来、どんな自動販売機が出てくるか楽しみ である。